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海外で有名な金継ぎ本3冊の内容まとめ

こんにちは!Yukiです!

金継ぎマニアとして、また金継ぎガールとして、海外で売られている金継ぎ本の内容は知っておかなければ!!!と思い、海外で有名な金継ぎ本を取り寄せて、読破しました!

日本では、金継ぎのやり方が写真とともに解説されたハウツー本が主流ですが、海外のものは全く違った観点から書かれた本たちでした!

金継ぎが気になるみなさまにとって、流石にこの太ーい本たちを読むのは大変だと思いますが

私の超シンプルなまとめを見れば、なんとなく読んだ気になれますので、参考になればうれしいです(๑˃̵ᴗ˂̵)و.

【金継ぎウェルネス】Kintsugi Wellness: The Japanese Art of Nourishing Mind, Body, and Spirit

著者:Candice Kumai

作者(女性、10代はモデルで現在はテレビにも出る料理家)が最愛の彼にフラれて傷ついた話と金継ぎをからめたストーリー。

本の後半はほとんど、日本のレシピ(ただし、完全に和食ではない)の紹介です。

彼女はアメリカ人の父と日本人の母のハーフなので、そういった立場から日本の文化や金継ぎをとらえているのが、新しいと思います。

また話も読みやすく、誰でも読み進めることができるでしょう。

彼女の昔の傷ついた話と、立ち直ろうと旅をして出会った人々との交流の話は心打つものがあります。

京都で実際の金継ぎ職人と出会われ、その写真も載っていました。

私が以前金継ぎストインタビューを行った、

小石原さんの金継ぎ 繕いのうつわ 小石原 剛さんです。

【金継ぎストインタビューの内容はこちらをクリック】

簡易金継ぎを主にされている職人さんです。

本の後半の展開に期待したのですが、自身の体験を金継ぎというコンセプトと紐づけて書き続けることが難しかったのか、ほとんどがレシピ本で終わっていて、なんだかこの本のカテゴリーが難しいです。

雑誌を読むように、かるーく金継ぎに触れてみたい人で、なんだか料理もしたい人におすすめしますが、

金継ぎの詳しいやり方などは掲載されていません。

【金継ぎと心理学】Kintsugi: Embrace your imperfections and find happiness – the Japanese way

著者:Tomás Navarro

本の冒頭、何やら昔々の逸話?のような、ミステリアスな話から始まります。

そしてプロローグが終わると、その逸話が数行ずつに分けられていて、それにからめて金継ぎと心理学について、プロの見地から話が広がります。

そして、どのように物事をとらえて乗り越えていくべきかを、金継ぎに例えながら解説されています。

心理学のプロなので、心理学のお話は、間違いない内容なのでしょう。

全て金継ぎと結びつけています。

心に傷を負う人々の中には、この本を読んで励まされる方もいるかもしれません。

ですので心理学のカウンセリングを受けてみたい、別の観点から物事をとらえられるようになって心を軽くしたいという方には、一助になるかもしれません。

しかし、金継ぎと結びつけなくても、こういった本はたくさんあるので、これぞ!という感じはしませんでした。

なお、金継ぎのやり方は載っていません。

【金継ぎと心のワークブック】Kintsugi: Finding Strength in Imperfection

著者:Céline Santini

一つのテーマごとにみごとな格言が引用されており、チャプターが変わるごとにワクワクしました。

よくある金継ぎをコンセプトにした「傷を隠すのではなく強みにして〜」のような話にとどまらず、

昔からある(または有名な人の)格言は、もう少し深い意味や過去の自分の体験を思い起こされる感じでした。

中には、村上春樹の言葉もありました。(英訳されていました)

Pain is inevitable. Suffering is optional. – Haruki Murakami

そして、一つのチャプターに対して一つのアクションが課せられており

自分を振り返って、本に書いていくというもの。

Next Actionを明確にすることで、本当の変化をあなたの中に起こして欲しいのでしょう。

他の英語の金継ぎ本とは違って、金継ぎのやり方が詳しめに書いてありました。材料も的確。

ただし、分量などは書いていないので、この本を読んでも金継ぎすることはできません。何を使うか、どういったことをするかが、他の本よりは具体的に記されていました。

一つだけ気になったのが、金継ぎの始まりについて下記のようなストーリーを書いているのですが、これは事実ではないかもしれません。

「室町時代に、足利義政が愛用していた器にヒビが入ったので、中国に送り返して修理を依頼したところ、かすがい止め(ホチキス止めみたいなかんじ)をされて戻ってきました。それが審美的に美しくなかったので、義政が家来により美しい修理を依頼しました。家来は、漆で継いだ上に金粉を蒔いて美しく蘇らせ、それが金継ぎの誕生ですたた。」

しかし、ネット上には下記のような記述がありました。

室町時代、足利義政の手にあった際、ひびが入り、中国に送って替えを求めたが、勝るものは作れないと鎹止めされて送り返されたと伝える。だがこれは、江戸中期の知恵者・伊藤東涯とうがいのでっち上げた話。中国風の絶妙な命名もそう。実際は中国で割れた青磁が修理され、日本にもたらされたのだろう。

TSUMUGU JAPAN ART & CULTURE 2020.5.20 「竹内順一・元永青文庫館長に聞く」より引用

本当の詳しい起源は、私が調べた限りではよく分かりませんが、室町時代に生まれたのは確かだと思います。

こうやって、まだ分かっていない不可思議なところも、また金継ぎの魅力なのだと思います。

この本は、金継ぎの工程別に自分を振り返り記入するというワークブック的要素も兼ね備えていますので

より実践的な取り組みをされたい方におすすめです。

個人的には、よくもまあこんなにたくさん格言を集めたなぁ!というところに面白さを感じました。

海外で有名な金継ぎ本3冊の内容を振り返って

海外の方には、金継ぎはユニークな日本の文化と思えてならないでしょう。

もともと海外では、修理というと、破損した部分が分からないように、できるだけ元の状態に近く直すからです。

しかし、金継ぎは単なる修理方法としてでなく、心にうったえるものがあり、比喩として「金継ぎ」を多く用いているのが、海外の大きな特徴だと思います。

昨年の9月には、国連事務総長が、世界平和の象徴として「金継ぎ」という言葉を用いました。

今年の東京オリンピック開会式でも、金継ぎを思わせるようなものがあったそうです。

この有名な本3冊でも、金継ぎとウェルネス(健康)・心理学・ヒーリングのようなコンセプトで描かれていました。

心の傷を修復する(むしろ、無理に直さなくていいから、克服する)というメッセージを、日本の金継ぎに例えて伝えています。

金継ぎ一つで1冊本を書くのは、なんだか無理矢理感があるような気がしましたが(笑)

高評価から低評価までレビューがあったので、読んで役立った方がいるのも事実。

これは海外のサイトをたくさん見てきた、個人的な印象ですが、

海外の方は、ギラッギラの金のライン、太っといニュルニュルしたラインが好きなイメージがあります。

それに比較し日本人は、金の繊細な細い線が好き。

そして、やはり侘び寂びが浸透している日本人は、最初こそ「THE金継ぎ」という感じの金で修復した器を手に入れたがりますが、そのあとは銀や黒、漆本来の茶色など、渋い味のある継ぎを楽しむ傾向があるように思います^^

そして、海外では簡易金継ぎを、日本本来の金継ぎと思っている方も多いです。

もちろん、漆は肌に付くとカブレる可能性があるので、リスクを抑えて金継ぎを楽しむには合成接着剤やエポキシも、有用な代替手段となるでしょう。

しかし、Intactな(壊れていない)器をハンマーで割るところから金継ぎが始まっているので

なんだか本末転倒というか…

自分で壊して合成接着剤で直す行為に、といういうヒーリング効果があるか、個人的にちょっと謎なところもあります(笑)

無地の器に金のラインを入れることで、アートな楽しみをしているのでしょうか。

いろいろな感性の違いはありつつも

海外の方が日本の金継ぎを注目してくれているのは、なんだかとてもうれしいこと!

そしていつからか、金継ぎの英訳はそのまま「KINTSUGI – キンツギ」になったのも、うれしい!

(柔道 -JUDO、寿司 = SUSHIみたいな感じです^^)

最後に、、、海外の本を読んで心に思ったのは

「金継ぎ=心のヒーリング」という概念を、海外から日本にもっと逆輸入したいなと思いました◎

特に自然災害の多い日本では、大切にしているモノもいずれ壊れる可能性が高い…

でもそれを、終わりと捉えずに、モノと向き合って直す行為自体が、心を軽くしてくれることがあるんです。

大量消費・大量生産の時代に、逆説を唱えているようで、ステキ。

これからも金継ぎやその周辺の文化の魅力を、わかりやすく発信していきますね♪

金継ぎスト・Yuki

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