外国人もびっくりの日本の伝統文化・金継ぎとは?
みなさん、金継ぎ(きんつぎ)を見たり聞いたことがありますか?そして、海外から注目されていることをご存知ですか?
金継ぎは、割れたりヒビが入った陶器や磁器を漆(うるし)などの自然の材料を使って修理し、最後にそのつなぎ目の上に金粉や銀粉などの金属粉を蒔いて美しく装飾する、15世紀の室町時代から伝わると言われる歴史ある日本の伝統的な修復技法です。
よく「金の溶接」と勘違いされている方が多いですが、漆を塗った上に金粉を振りかけて仕上げているため、割れたラインの表面は金色ですが、中は茶色の素材です。
現代の日本人でも全ての人が知っているわけではないニッチな器の修復方法ですが、2020年のコロナ感染症拡大と同時にステイホームで楽しめる存在として人気が急上昇しました。
どれだけの人が金継ぎを知っていて、コロナ禍にどれだけブームになったかについて、データがあります。
2019年10月に当社が独自に調査した結果では、女性だけを対象にしていますが、金継ぎの認知度は41%でしたが、2021年6月の拡大調査では56%まで上昇していました!
しかし、日本人女性の約半分に知られている金継ぎですが、男性の認知度はもっと低いことが予想されます。
なぜ女性の方が多く知っているのか?実は金継ぎは、主に器好きの30代以降の主婦に人気なのです。
もちろん男性でも金継ぎに興味を持っている方はいますし、金継ぎ教室に通ってくださる男性も少しずつ増えています。陶芸をされている方や、日本の伝統文化に興味がある方が男性には多いように感じます。
しかし当社独自の調査で金継ぎに興味がある方にその理由を伺ったところ、一番多い回答は「自分が大切にしていた器が壊れても、修理してまた使い続けることができるから」です。
大量生産・大量消費の現代でも、室町時代から変わらないモノを愛でる気持ちが続いているのですね。
金継ぎ(きんつぎ)に対する海外の反応がすごい!
海外で日本の金継ぎが話題の理由
そんな日本人でも半分以下しか知らない金継ぎを、海外の方が「すごすぎる!」と衝撃を受け、評価しているのは意外に思われるかもしれません。
なぜそれほどまで注目を浴びるのか?それは、捨ててもおかしくないお皿を修理し、傷をあえて目立たせる逆転の発想が、日本人特有でユニークだと感じるからのようです。
普通「修理」というと、カバン・靴・腕時計・服…など様々な物があげられますが
どれも、元あったように、破損が分からないように綺麗にお直しするのが基本です。
しかし金継ぎは、破損部を強調するどころか、金粉というゴージャスで高価なもので装飾し新たな芸術・アートとして価値が高くなるという、外国人には考えられないアイデアなのです!素敵!
そして、日本には「わびさび」や「もったいない」という考え方が古くからありますので、そういったことと金継ぎによる修繕が合わさって、なんとも言えない妖艶で美しい感じを受けるのでしょう。まさに日本の精神・心です。
外国人から評価が高いことは、Google trendの結果や、有名な人・企業が「Kintsugi」というワードを発する頻度が高くなっていることからも伺えます。
下記の棒グラフは、Google trendで検索した「kintsugi」というキーワードの過去5年間全世界での人気度のライブデータです(常に更新されて表示されます)
海外の中でも、アメリカ・カナダ・ヨーロッパ・イギリス・オーストラリアなどで話題となっています。
2020年から2021年にかけて”kintsugi”が有名になったきっかけに、2つの事例があります。
1つ目は、国連事務総長のアントニオ・グテーレスが2020年に9月17日の国際平和記念デーに出席し、コロナの世界的大流行の終息を図る中で、壊れたものに美を見出す日本の理念を、今日の亀裂を深める世界の指針とすべきだと語りました。
壊れたものをつなぎ合わせて愛でる日本の金継ぎについて言及した、英語の原文は下記になります。
Japanese culture has a deep appreciation for natural imperfections and flaws. This is reflected in the art of kintsugi – putting broken pieces of pottery together with golden lacquer to create a stronger, more beautiful whole. The result is a piece that is not “good as new”, but “better than new”.
17 September 2020
Secretary-General’s remarks at the Peace Bell Ceremony on the occasion of the 39th Anniversary of the International Day of Peace [as delivered]
URL: https://www.un.org/sg/en/content/sg/statement/2020-09-17/secretary-generals-remarks-the-peace-bell-ceremony-the-occasion-of-the-39th-anniversary-of-the-international-day-of-peace-delivered
2つ目は、パラリンピック閉会式にて国際パラリンピック委員会(IPC)のアンドリュー・パーソンズ会長が閉会の挨拶で金継ぎについて言及しました。
そのスピーチでは金継ぎが不完全さを受け入れ、隠すのではなく大事にしようという考え方だと紹介され、そのうえでパラリンピックの理念と共通すると語られました。
There is an old philosophy in Japan, called Kintsugi.
Andrew Parsons, 5 September 2021
金継ぎは伝統技術であるだけでなく、新たな哲学のような意味あいでも用いられています。
金継ぎを体験したい外国人
コロナ前の日本のインバウンド需要が上昇していた頃から、日本を訪れた外国人ツーリストの中で、アクティビティとして金継ぎを体験したい!というお声は多かったです。
その頃から日本にはいくつか「金継ぎ教室」がありましたが、職人が細々とやってきた金継ぎ修理ですから、英語で対応が出来る方は少なく、また金継ぎに関するお店も少なく、多くの外国人は金継ぎ体験をあきらめるしかありませんでした。
そして、金継ぎ体験できなかった外国人たちは、お土産に金継ぎされた器を書いたい!となるのですが、手間暇かかってできあがる全て一点ものの金継ぎは、あまり売られていませんでした。
そこで今おすすめなのが、「金継ぎキット」と呼ばれる、自宅で気軽に金継ぎを楽しめる道具が揃ったセットです。日本に来れなかったり、コロナ禍のstay homeで外出を控えて、金継ぎ教室で先生から金継ぎを習うこと・体験することができなくても、金継ぎを一人で自宅で経験することができるため、この金継ぎキットの需要も伸び続けています。
海外の方も金継ぎキットを作成して販売されていますが、そのほとんどは簡易金継ぎと呼ばれる、合成接着剤とエポキシなどの合成樹脂で金継ぎ「風」に修理するキットで、食器に使われた場合の食品安全性は確立されていません。
そのため、本当の日本の伝統を発信すべく、最近では当社を含む日本の数少ない会社が本物の漆を使う金継ぎキットを作成し、英語で翻訳された手順書もつけて通販で海外に向けても販売しています。
英語という別の言語で説明するのは難しく、また輸出もある程度の知識が必要で、さらに漆(うるし)はきちんと届け出をしないと危険物とみなされて海外発送できないので、日本から海外に伝統金継ぎキットを送るのはそう簡単なことではありません。
また漆は皮膚につくとかぶれる可能性があるので、外国人の方にも十分な注意をする必要があります。これはお客様に安心して楽しんでいただく事だけでなく、訴訟を回避する上でも重要となってきます。
海外テレビ局から取材を受ける金継ぎ専門の会社つぐつぐ
パラリンピックと金継ぎ、オーストラリアのテレビ局からのインタビュー
パラリンピック開幕直前の8月のある日、突然オーストラリアのテレビ局「news7」からつぐつぐに取材の連絡がありました!大きなニュース番組の中のスポーツ特集のようです。何やら、過去パラリンピックで数々のメダルをとったカトリナさんが金継ぎが大好きで、私にインタビューしたいとのことΣ(゚Д゚)
ということで、特別な許可がないと入れないパラリンピック会場に入れていただき、英語で金継ぎについてお話ししてきました!
いつもみたいに金継ぎの魅力を発信するだけでなく、「パラリンピックと金継ぎ」というテーマで、関連づけたお話しができるよう、事前に言葉を入念に考えてからコメント・発言させていただきました。
「体に不自由のあるパラリンピック選手がそれを糧に練習と努力を重ね、克服して金メダルをめざす」という事実が「壊れた器がそれを強みに金で仕上げることで以前より輝く」金継ぎと重なるように感じました^^
レポーターのカトリナさんがご自身のFacebookで、オーストラリアで報道された動画をあげてくださっていたので、ぜひ日本のみなさまにもシェアさせていただきます♪
オーストラリアの人にも読んでいただくために英語で書いた下記の記事もぜひご参照ください!
金継ぎがドイツ、ドバイへ…
その他の国からも取材を受けています。
まだ詳細はお伝えできませんが、ドイツの某テレビ局からも金継ぎ実演付きで取材を受け、2022年の夏公開される予定です!(1年以上先…)
公開されましたらまた詳しく記事にしますが、ドイツからの質問は、金継ぎの魅力と、私がなぜ金継ぎを始めたか?などお話ししています。
さらには、海外からの取材ではありませんが、日本から世界中に金継ぎを大きく発信するできごととして、2021年10月1日から始まったドバイ万博でYukiが金継ぎ師た21分割の大皿が、日本間のプロジェクションマッピングに出演しています!!
このプロジェクションマッピングでは「日本発祥の丸いものシリーズ」として登場し、音楽に合わせて、ダルマや太鼓などに続いて21分割のお皿が再生して丸く輝くという、鳥肌が立つような映像でした!
この赤い大きなお皿以外にもつぐつぐが金継ぎ器を映像協力していて、どの作品も素晴らしいです。
ドバイ万博について詳しく記事を書きましたので、ぜひご参照ください^^
<まとめ>
金継ぎは私だけでなく、他にも職人さんや個人の方が手仕事として営まれていて、みなさまの大切な器を日々修復しています。
ですので私以外にも海外から取材を受けていらっしゃる方はいると思いますが、私が海外から取材のお声がかかったのはなぜか、考えてみました。
理由はおそらく、私が会社を作った時から金継ぎの魅力を世界へ広めるミッションを持って活動していて、留学経験から得た語学力を生かして英語併記のサイト・金継ぎキット・YouTube動画を配信しフォローされているからかなと思いました。
そういった意味で、こんな機会をいただけたのは本当にうれしいですし、今後も、日本人でも知らないような専門用語の多い金継ぎですが、きちんとした情報を外国人でも理解できるように英語で伝えたいと思っています。
そして、外国人からの金継ぎニーズに答えられるよう、常にアンテナを貼っていきたいと思います。
日本の伝統文化にもっと興味を持ってもらって、日本をもっと好きになってほしいです!!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。