Yukiと同じ地元の大阪府茨木市で、漆塗りから木工まで幅広く活躍されている丸山智裕さんを訪問し、インタビューさせていただきました!
URL: https://note.com/diy_urushi/
Twitter: @happourushi
DIYうるし部 丸山智裕さんについて
活躍の舞台である工房は、京都からも近い大阪府茨木市にあります。
丸山さんは学生時代、京都伝統工芸大学校で漆を学ばれ、その後、塗料の業界にも勤めながら、漆に携わってこられました。
いろいろな種類がある京都の伝統工芸の中で、なぜ漆を専攻されたのかお伺いしたところ
「漆が最も扱いやすそうだったから」とのこと!
丸山さんの漆芸業界 発明品2つ
①漆がみるみる固まる?!発泡ウルシとは
丸山さんは「発泡ウルシ」と呼ばれる、不思議な漆を開発されました。
型に発泡ウルシを入れると、まるでチョコレートのようにお人形ができあがります!
漆を固めるのには時間がかかるので、昔は熱を加えていたそうなのですが、
現在は常温でできるように改良されたそうです。
面白いですね!!
②金継ぎで使用するテレピンの代わりに!低臭・弱毒性うるし用希釈・洗浄液
丸山さんは長く塗料の業界に関わってこられたため、化学的な溶液・塗料に非常に詳しいです。
研究論文を出されたり、昨年は新しい種類の「うるし用希釈・洗浄液」を販売開始されました!
どの点が新しいかというと・・・
金継ぎ職人さんは漆を洗うときにテレピンをよく使いますが、石油系の液体のため、ご家庭で一滴でも使用すると部屋中臭くなります。
しかし、丸山さんが販売されている低臭・弱毒性うるし用希釈・洗浄液は、匂いがかなり軽減されています。
この溶液は、テレピンそのものではないのですが、非常に似た性質を持っているので、
金継ぎや漆塗りで使用するテレピンの代わりに使用できそうです。
ただ注意点としては、匂いは軽減されているものの、テレピン同様たくさん吸い込むと体に良いものではありませんので、
お部屋に充満しないよう、窓を開けて換気はしっかりと行いながら使用しましょう。
漆器を木地から作る – 木工のやり方と使用する道具
漆塗りを専門にされている丸山さんですが、漆に携わる傍ら、木工をご自身で習われて、漆器の木地も作成されています。
工房にある、本格的な器具を見せていただきました。
木を削る機械(木工旋盤)
木片や粉を吸い取る装置付き木を削る道具 カーブにあった形の刃を選びます グラインダーで刃を研ぎます 装置に木を取り付けます 木が回転しているところに刃を当て
削ります!途中経過の木
この一連の作業を「ウッドターニング」というそうです。
漆を塗るだけでなく、ご自身で木から漆器の形を作ることを学ばれ、現在は幅広いスキルをもったスペシャリストとしてご活躍です。
漆を乾かす、手作り特大うるし風呂(室)
漆塗りや金継ぎで最も重要になるのが、漆を乾かす場所である漆風呂(室、ムロとも言います)。
丸山さんはご自身でとても大きな漆風呂を作られていました!
漆は特定の条件下(温度20〜30℃、湿度70〜85%)で最適に乾くため、漆風呂の中も工夫が必要です。
特に日本の冬場に頭を悩ます温度・湿度管理ですが、電動のヒーターと、水を入れたバットも設置されていました。
プロの漆塗り師の品質管理は、ここにありました。
漆(うるし)の特徴と魅力、なぜ続けるのか?
長年、塗料業界に勤めていた丸山さんですが、漆も塗料の一つです。
漆は皮膚に付着するとカブレる可能性があったり、乾くのに時間がかかるという特性もありますが、
塗料として物に塗った後、9割以上が残り、無駄が少ないという性質があるのが魅力的なのだそうです。
確かに、他の塗料は、物に塗っても揮発してしまいほとんど残らないものが多いですよね。
そのため漆は固形分が高く、自然の液体を合理的に利用できていると言えます!
ここで、丸山さんが漆をずっと続けていらっしゃる理由をお尋ねしたところ、「意地」とのご回答。
漆が好きなので、もっと広まればいいなというお気持ちがあるそうです。
現在、日本の漆芸産業はどんどん衰退していますが、漆の用途は食器やお皿などの漆器のみならず、
最近では、ペンの持ち手を漆塗りの木にしてそれが大ヒットしたり、
生活の思わぬ局面で漆が使われ、その高級感と伝統が受け入れられてきています。
漆に携わる丸山智裕さんのインタビューまとめ
この度のインタビューで、お仕事のことや漆について快く丁寧に教えてくださいました。
金継ぎという漆を使った技法の一部しか知らない私ですが、もっと広い意味での漆の使い方を学ぶことができました。
2020年ごろから金継ぎだけがブームになっていますが、金継ぎは漆の世界への第一歩だと思っています。
金継ぎが楽しいと思った方は、漆もとても面白いので、ぜひ金継ぎのルーツである漆にもっと触れてみてください。
2021年10月27日
執筆者:俣野 由季